ニャンおっ太

炎628のニャンおっ太のレビュー・感想・評価

炎628(1985年製作の映画)
5.0
再鑑賞。ヨハネの黙示録から引用された原題Иди и смотри 「来たれ、そして見よ」は、大祖国戦争戦勝40周年に製作されたソ連映画。無邪気ボーイ・ミーツ・ガールの戯れから始まり、やがてパルチザン少年の残酷なジュブナイルに。自然光のみで撮影された泥色の映像と樹々の騒めき鳥の囀り蠅の羽音のフィールドレコーディングや脳の痺れを表すエフェクトされた耳鳴りノイズな音響が印象的。アップショット多用で畏怖や絶望や狂気を表情だけで伝える主人公フローリャ役アレクセイ・クラフチェンコの演技が異様に素晴らしく「時計じかけのオレンジ」アレックス・デラージ役マルコム・マクダウェルや「シャイニング」ジャック・トランス役ジャック・ニコルソンをも超える顔インパクト。時の経過で少年が別人に変貌するのは多少のメイク効果もあるけれど地獄を体感した者にしか出せない究極リアリズム。これ「検索したらいけない映画」として有名らしく、全編実包を使った銃撃や爆破の過酷な撮影中クラフチェンコ少年が精神崩壊の恐れに対し自律神経治療で臨んだ秘話に驚愕。邦題はナチスドイツの蛮行で焼失した628の村の意。今まさに過去の悲劇を忘れた現在のロシアへの因果応報な風刺として語るべき。世界の片隅には憎悪の銃口をプーチンに向けている少年がいる筈。機関銃に襲われ魂を何発も撃ち抜かれるような衝撃的な痛み与える作品でした。勧めてくれた友人に感謝。