おーたむ

群衆のおーたむのレビュー・感想・評価

群衆(1941年製作の映画)
4.2
フランク・キャプラ監督は、「素晴らしき哉、人生!」以来、2作品目の鑑賞でしたが、なかなか面白かったです。
2作見てみて、ずいぶん主張のある監督さんだな、と思ったりもしましたが。

英雄に祭り上げられた偽物が、それを演じているうちに本物になっていく…というストーリーが、やはり面白いです。
作中で語られる、人間かくあるべきという主張は、たぶん制作側の主張でもあるんだと思いますが、それを語っているのが偽物だというところがユニーク。
主人公やヒロインが、感情移入しやすい人物とは描かれてない点とあわせ、主張を相対化させる作用があって、一筋縄ではいかない作品になってたと思います。
信じたい言葉だけを信じ、勝手なヒーロー像を作り上げる群衆の愚かしさ、恐ろしさを描いた作品と見ると、痛烈な皮肉に、自身を省みさせられます。
反面、偽物の正義であっても本物の善行を喚起することがある、という点に目を向ければ、声をあげるという行為が持つ力について、考えさせられます。
見る角度によって見え方が変化する、複雑な味を持つ作品だったと思います。

一点だけ、きれいに着地できる方向は明らかだったのに、変に甘い終わり方をしたラストは、好みではなかったですね。
ハッピーエンドがフランク・キャプラ印なのかもしれないし、想像を裏切られたのも確かですが、作品が必要としていたラストが本当にコレだったのかは、ちょっと疑問でした。
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