マヒロ

わんわん物語のマヒロのレビュー・感想・評価

わんわん物語(1955年製作の映画)
2.0
お金持ちの家で飼われるコッカースパニエルのレディだったが、飼い主の夫婦に赤ちゃんが出来たことから構ってもらえなくなり、乳母も犬嫌いで辛く当たられたことから家出してしまう。そこで野良犬のトランプと行動を共にすることになり、周りの飼い犬には無いワイルドな雰囲気に惹かれていく……というお話。

ほとんど動物主体の話で、犬目線でのカメラワークなので位置が常に低く、人間の顔は映りすらしない場面の方が多いというのが面白かった。犬たちのアニメーションは言わずもがなクオリティが高くて、動物っぽいリアルな動作とデフォルメされたデザインの融和が上手くて違和感ないのは流石。
ドタバタ劇もあるが全体的にはしっとりした恋愛の物語で、楽しい娯楽映画というよりじっくり腰を落ち着けて見る恋愛映画(ただし犬同士)みたいな印象。

ただ個人的には腰を落ち着けすぎてる……保守的すぎるところが正直好きではなくて、野生の犬達のリーダー的存在であるトランプが呆気なくお金持ちの家に貰われて家庭を持ってめでたしめでたしという結末は落胆が大きかった。そこは流れ者らしく全てが終わったらクールに去って欲しかった…。
物語的にも後半のレディが保健所に捕まるシーン以降はどうも展開が雑な感じがして、その保健所のシーンなんか丸々無くても成り立つし、その後の追いかけっこではレディの隣人犬が命を落としたかのような描写があったと思いきやすぐ後の場面でケロッとして出てきたりと、首を傾げたくなるようなところが多かった。
恐らく保健所のシーンは、捕まっているトランプの仲間達に「あいつは惚れた女のためなら野良も辞めるよ」と語らせて印象付けるためだけのシーンだし、前述のようにお金持ちの犬は呆気なく救われるのに、保健所で処分を待つ彼らについてはなんの救済もないというのもなんか嫌だった。

……と、考えれば考えるほど引っかかる点が出てきてしまう映画だった。価値観のアップデートがまだされていない、ある意味今日日では貴重な作品なのかもしれないが。

(2021.58)
マヒロ

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