オザキ

ガメラ3 邪神<イリス>覚醒のオザキのレビュー・感想・評価

4.4
10年ほど前に家族が借りてきたDVDでこの作品を見て「映画の外の世界」があることを知り、正直ショックを受けました。

ヒーローの、その大きな力の足元で踏み潰される名も無き、しかし決して名も無くはない人々の存在を観客に思い知らせる痛烈な一撃。
「私はガメラを許さない」
ポスターの中央の彼女の強い瞳は、無邪気に戦いに一喜一憂する作品外の観客に向けられた視線でもある。
この「力は無謬ではない」「名も無き人などいない」という映画の枠を打ち壊す概念は、MCUの『CA:シビルウォー』やSWシリーズの外伝『ローグワン』でも見出すことができるが、その視野を与えてくれたのはこの作品でした。
画面外を想像することを可能にしてくれた人生の一作を、2021年にドルビーアトモスで観るこができて本当に嬉しい。

ドルビースクリーンの黒の美しさの中に浮かぶ青白い月明かりと飛翔するイリス、永遠の美。
ヒトの生き物としての生存欲が注がれた器、闘神ガメラは個としてのヒトを蹂躙しながら全としてのヒトの前に立ち戦い続ける。
しかしその姿はヒトのエゴが映るのかどこまでも恐ろしく、一方ヒトの怒りを取り込みヒトの滅びを導く邪神イリスは眩いほどに美しい。
この生と滅びの美醜のいびつさが作品に脚本以上の奥行きを与え、あとちょっとリドリースコットと気が合いそうだなって…(プロメテウス〜コヴェナント)
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