アニマル泉

暴力団/ビッグ・コンボのアニマル泉のレビュー・感想・評価

暴力団/ビッグ・コンボ(1955年製作の映画)
5.0
ルイスの最後のフィルム・ノワールである。スタイリッシュに全てが決まる美しいフィルムだ。夜、光と影、スモーク、ネオンサイン、ジャズ、拳銃、大胆な構図やアングルショット。撮影はジョン・アルトン。ワンシーンワンカットが多い。長回しだが要所を端正な構図を決める、「ごし」やグループショットで芝居をカットを割らずに押して撮る。B級監督として低予算の早撮りを達成するために、いかにカット数を減らすかという命題の答えが本作のスタイルである。初期の瑞々しいがこれ見よがしでもある決まりショットではなく、映像の的確な説話法のなかでルイスらしさを発揮していて、風格と品格が感じられる。本作ではクローズアップが効いている。サミュエル・フラーのクローズアップを想起した。
「死刑執行人もまた死す」のブライアン・ドンレヴィが嬉しい。ドンレヴィの射殺場面は補聴器を外すと劇伴奏まで断絶して無音になる。サイレントでマシンガンが火を吹く。やるなぁ!
「いきなり」「突然」もルイスの掟である。アクションは不意打ちで始まる。油断がならないのだ。コーネル・ワイルドはいきなり殴られる。骨董屋ジョン・ホイトも長いワンシーンワンカットの最後でドアを出た途端に射殺される。ここは閉まる扉の向こうの射撃音で描かれる。リタ(ヘレン・スタントン)も同僚刑事サム(ジェイ・アドラー)も重要な役なのに、いきなり非情に殺される。リタの「靴」が痛ましい。ルイスは「夜よりも深い闇」も靴の映画だったことを思い出す。若きリー・ヴァン・クリーフがいい。独特の存在感だ。クリーフとアール・ホリマンのコンビの最期も突然で痛ましい。
ワイルドの補聴器での拷問、ヘアトニック責めも凄惨だ。クライマックスはジーン・ウォレスがリチャード・コンテを逃さずにライトを当ててスモークの闇から浮かび上がらせる。映画は光と影で成立するという原点に触れてしまった、奇跡的な至福の場面である。
ブラウン役は当初、ジャック・パランスだったのが撮影前日に降板して、ルイスがリチャード・コンテに頼み込んだらしい。コンテが冒頭でボクサーに言う「一流になれ」というセリフが本作のキーワードになっている。コーネル・ワイルドとジーン・ウォレスは夫婦で二人の会社セオドラプロダクションが本作を製作している。アライド・アーティスツ・ピクチャーズ・コーポレーション配給。
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