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ミスター・アーサーのtakのレビュー・感想・評価

ミスター・アーサー(1981年製作の映画)
2.2
政略結婚を控えた大富豪のわがまま青年(ダドリー・ムーア)と、失業中の父親と暮らす女優志願の女性(ライザ・ミネリ)の身分違いの恋を描いたヒット作。実は今回初めて観た。主題歌 Arthur's Theme (Best That You Can Do) の印象が強い映画。なにせオスカーも受賞しているし。主題歌の邦題がニューヨークシティ・セレナーデとあるくらいだから、さぞかし甘ぁいロマンティック・コメディだろう、と僕は想像していた訳よ。

 ところがどっこい。タイトルロールたる主人公は、冒頭から一人で笑いっぱなしで飲んだくれの勘に障るボンボン。正直嫌悪感が先にたったね。金持ちだから真実の愛が得られない。だから人間としては不幸である、とかいうお話だけれども、主人公に同情の余地を僕はほとんど感じなかった。ライザ・ミネリとの2度目のデートあたりで、”実は面白いだけでなく、いいヤツなんだ”と彼女が惹かれる必然性は感じられなかったし、ダドリー・ムーア側にしてもいままで会ったこともない女というだけで、あそこまでライザ・ミネリにお熱になる必然性はどうも薄い。このあたりは心理描写が欠落しているようにも思えるのだが。

 おまけにラストは、真実の愛も巨額の富も手にしてしまうんだから。レーガン政権下、”双子の赤字”にキャーキャー言い出す前の、まだ怖い者知らずの強さをアメリカ経済が誇っていた時代の映画だからねぇ、金持ちが勝つんだ最後は。だからこの映画を「フランク・キャプラの人情劇に通ずる」と評する人々の気が知れない。キャプラ映画は「棺桶にお金は持っていけない」ものだと説いている訳で、全く違うのね。まぁラストでライザ・ミネリに「遺産なんかより、あなたがいればいいわ!」とでも言わせていたら納得するのだが。それにしてもジョン・ギールガットの育ての親振りは名演。心に残る。そしてバート・バカラックの音楽はさすがに素敵。
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