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ヴィデオドロームのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

ヴィデオドローム(1982年製作の映画)
4.2
町山智浩さんの著書「<映画の見方>がわかる本 80年代アメリカ映画 カルト・ムービー編」に掲載されている作品を順番に見ていこうと思い、まずは1本目の『ビデオドローム』を鑑賞。

1983年の公開当時は「難解」「理解できない」という評価だったようですが、テレビやマスメディアの功罪がさんざん議論されている2020年の今の視点で見ると、難解どころかめちゃくちゃ分かりやすいし、むしろ約40年も前に、すでに来るべき未来を予見していたデヴィッド・クローネンバーグの見識に恐れ入りました。傑作だと思います‼️

懐かしのビデオテープがたくさん出て来て、メッセージのやり取りに使われたりしていますが、今やったらUSBメモリかSDカードですかね。もしくはURLだけ送られてきてネット配信でメッセージを伝えるでしょうね😊

この作品は、リック・ベイカーの特殊メイクの凄さに目が行きがちですが、脚本も素晴らしく、心に刺さるようなセリフがたくさんあります。

たとえば、マーシャがマックスに言う「彼らにはあなたにはないものがあるの  哲学よ  それが危険なの」というセリフ。世の中に存在する過激な破壊活動が、必ずしも「悪意」によるものとは限らないという本質を突いていて愕然とさせられます。

オブリビアンがマックスにビデオ上から語り掛ける「アメリカの精神の闘いが  ビデオ闘技場(ビデオドローム)で行われる テレビの画面は心の目の網膜だ  すなわち頭脳の一部とも言える  ゆえにテレビ画面に現れたものは  見ている者の体験となる   つまりテレビは現実だ  現実以上に」とか「結局  現実など認識の問題でしかないのだ」というセリフも、テレビで恣意的に切り取られた映像を現実の全てだと誤解してしまうリスクを喝破してますよね〜🤔

そんなオブビリアンのことを娘のビアンカが「父は生身の人生よりテレビの真実性を選んだ」というセリフも空恐ろしい😱

エンジニアのハーレンがマックスに語り掛ける「アメリカは弱くなった 世界は厳しいのに 世界はシビアだ 荒涼たる時代だだから我々は純粋で 直接的で強くならねばならぬ 生き残るために ところが君や このテレビ局という名の不浄な場所 目先の快楽にふける局の連中 それを見てる視聴者たちが 我々を内側から腐らせてる 阻止せねば」というセリフも、メディアの悪しき商業主義がこの時点ですでに問題視されていたことに驚きを感じました。

かたや「ブラウン管伝道所」なる場所で、テレビ(ブラウン管)がホームレスの社会復帰を促すなんていう能天気なオプティミズムや、メガネ屋さんの見本市パーティーがこんなド派手でこんなに人集まるか?😆って思ったりとツッコミどころもありましたが、まあそれはご愛敬レベル。あ、でもオブビリアンの伏魔殿のようなオフィス内の美術は見どころだと思います。

あと最後に、バリー氏!「ちょっとしたSMが必要」って!「ちょっとした」っていったい何やねん‼️😆
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