KOUSAKA

ビニールハウスのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

ビニールハウス(2022年製作の映画)
3.6
「半地下はまだマシ」というキャッチコピー通り、今考えたら2019年公開の『パラサイト 半地下の家族』は、結構エンタメ要素の高い作品だったな~と思えるほど、本作は希望のかけらすら見えずひたすら「絶望的」でした。

韓国では、半地下どころかビニールハウスで生活している人がいるという事実を初めて知りましたが、パンフレットの解説によると、韓国の不動産格差の問題は、軍事独裁政権時代に情報を独占していた政治家や権力者たちが、将来的に値が上がることが分かっている土地を秘密裏に買い占めたりした「過去の悪政」が原因ということなので、非常に根深い問題だなと感じました。

映画は、たとえどんなに暗く絶望的な内容でも、ラストに「一筋の希望の光」を提示して終わるという作品が多いと思いますが、本作はそのトレンドに対するアンチテーゼというか、本来「希望の光」を生み出す義務を担っているのは(映画を含むエンタメなどではなく)リアルな社会に生きる政治家たちであり、もっといえばその政治家たちを選び監視する役割の私たち自身であるということを突き付けているように思えます。

「希望の光」を提示することなく絶望をそのまま提示する、あるいはそんな絶望的な状況を強烈に皮肉るだけ皮肉って終わらせるという意味で、先日鑑賞した『FEAST-狂宴-』を思い出しました。もしかすると、これが最新のトレンドなのかもしれません。
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