ただのすず

レイクサイド マーダーケースのただのすずのレビュー・感想・評価

4.0
役所広司と柄本明、共演で、しかも密室劇。
それだけで観る意味がある、のでそれ以外は何も期待していなかったのに、凄すぎ。

淀みを正すとか、歪んで成長したものを元通りにするとか、鬱積したものを解放するようなのを期待して観る所があると思うけど、淀みをよどみのまま、歪みをゆがみのまま、終わるというのに痺れる。
だから終始、胸焼けのように気持ちが悪い。
私は、淀んだ水は全て入れ替えてしまいたい、歪んだ木は根から掘り返して植え直したいと思ってしまう、だからこそ駄目になってしまうものもあるのだろうに。
親と子、家族の話であるのに。ただの一度も、親と子が目を合わせて本音で会話するシーンがない。本当に一度も。
人と人が永遠に平行線で交わらないのだと言われているような気持ちになる。
なのに、愛は確かに存在していた。各々の一方通行の自分勝手な愛が。

素人が突然殺人を隠蔽しなくてはいけなくなった状況をとても丁寧に映しているのも良い、テーブルクロスで死体をラッピングして運搬し、裸に剥いて、指紋を燃やし、顔を潰す、重労働を終えた後は我に返ってちょっと笑えてきたりもする、鬼畜の所業なのに、人間らしく思う。

何より、朝靄も、深淵も、夕の反射で紫色に子供たちの顔を妖しく照らした湖畔の美しさが目に焼き付いて離れない。


こういう映画に細々とでも出会ってしまうから、やっぱり映画を観ることをやめられない。面白かった。