qqfowl

原子力戦争 Lost Loveのqqfowlのレビュー・感想・評価

原子力戦争 Lost Love(1978年製作の映画)
4.0
原発の町で男女が心中。男は発電所の技師だった。女は東京でヤクザと暮らしていた。接点のないはずの2人がなぜ心中したのか。ヤクザが見た、原発の町の秘密とは。

1978年公開。スリーマイル島の事故や、映画「チャイナ・シンドローム」より前なのが意外。

昭和レトロを堪能した。



~ネタバレ~

事件の舞台はもともと小さな漁師町だったが、原発誘致により税収がドカンと増えた。住民の中には原発反対を言う者もいたが、それももはや本心ではなく土地を高く売ろうとしてのこと。また、資源のない日本でエネルギーを安定確保するために、国も学者も、したがってマスコミも、原発を推進するしかなかった。

実は原発で燃料棒の破損事故が起きていた。その証拠を持っていたのが心中で死んだ技師だった。彼は事故について、かつての師であった学者に相談していた。ところが、何があったのか、美貌の妻を残して別の女と心中してしまった。

女は、東京でヤクザの情婦になっていたのを、母の命日だからといって、原発で働く兄に呼び戻された。その後何があったのか、技師と心中してしまった。

不自然な心中と原発の関係を、東京から女を捜しに来たヤクザと、地元の新聞記者が探ろうとする。ヤクザは、死んだ技師の妻から事故の資料を譲り受ける。記者はその資料を持って学者に詰め寄る。

しかし、原発推進の支障になるような情報は地元住民にも学者にも誰にも歓迎されない。彼らの声は押しつぶされてしまうのだった…

というような内容だった。


真相は語られないが、状況から考えると、最初の心中事件は関係者と学者がグルになって計画したんだろう。学者は技師の妻と不倫してたから内心夫が邪魔だったかもしれないし(技師が死ぬ前から不倫が始まっていたのかは明示されなかったが)、情婦の兄は、妹がヤクザと暮らしてるのが知れたら不名誉だから、この際始末しようとしたのかもしれない。あるいは、父が土地を高く売るために原発反対を言い、近所に変な目で見られている状況を打開したかったのかもしれない。誰も彼も全体的にドロドロだが、個人的には妹に手をかけて何の罪悪感も持たない兄が最悪だと思った。
qqfowl

qqfowl