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セシルの歓びのkaomatsuのレビュー・感想・評価

セシルの歓び(1967年製作の映画)
3.5
ブリジット・バルドーの出演作品は、ゴダールの『軽蔑』と、オムニバス『世にも怪奇な物語』の2話目くらいしか観たことがなかった。たまたま折に触れ、BB主演作品である本作を観てみたのだが、恋愛モノとしての徒然なる力の抜け具合や、スタイリッシュな映像やBBのファッション、ロンドンやスコットランドの風景が美しく、しかも情趣に溢れており、それだけで映画として成り立ってしまうような、ある種の贅沢さを味わえる作品に思えた。

パリのファッション・モデルのセシル(ブリジット・バルドー)には、恋人フィリップ(ジャン・ロシュフォール)がいる。互いに何不自由なく愛し合ってはいるのだが、セシルの心は満足とは言えなかった。そんな折、セシルはヴァンサン(ローラン・テルジェフ)と出逢う。程なくモデルの仕事の都合でロンドンへ渡ると、撮影現場でヴァンサンと再会。フィリップという恋人をパリに残しながらも、次第にヴァンサンに惹かれ始めるセシル。二人は徐々に近寄り始める。ある日、行くあてのないドライブで、二人はスコットランドの古城に辿り着き、官能的な愛の日々を過ごす。ドライブから戻ったセシルに、フィリップから電話があり、セシルのいるロンドンに行くと言う。片やヴァンサンからは、香港行きの飛行機に乗るから、空港で会おうと告げられる。果たして、二人の恋人からの誘いに対して、セシルが出した結論と、その愛の行方は…。

二人の男の間で揺れ動く女心を、ブリジット・バルドーが繊細かつ自由気ままに演じ、可愛らしくも大人の美しさも併せ持った魅力を発揮している。そして、セシルとヴァンサンが愛を確かめ合うシーンは、キス・シーン以外はほとんど省略されているが、二人の唇の重ね方は、とても官能的できめ細やか。エロティックな想像力を掻き立てるのにこれ以上のものはなく、他の描写など不粋だ。そんな演技がサラッとできるのは、この時期の艶やかなバルドーならでは。あと、超・個人的な見どころは、スコットランドの農村で、牧羊犬のボーダー・コリーが羊を追いかけていた数秒間のシーン。この映画が製作された1966年頃は、日本ではまったくの無名だったばかりか、原産国イギリスでさえも公認されていなかったボーダー・コリーが、映像の中でたくましく羊を追い回している姿にいたく感動し、私が飼っている♀のボーダー・コリーが元気よく車を追い回す姿に無理やり重ね合わせてしまった。ほかにもヴァンサンの飼うワンコ(ビーグル犬?)が登場したり、犬好きにはたまらない作品と言えるかも。
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