わたがし

シャークボーイ&マグマガール 3-Dのわたがしのレビュー・感想・評価

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 アナグリフ3Dで観た。ロドリゲスが息子と一緒にキャラ考えて……みたいな作り方してるだけあって、確かに子供の頃に観てたらワクワクがとまらない最高の映画だっただろうなという。しかも根底のテーマが陳腐だけどすごいエモくて、だから我々は映画を観るし空想の世界に憧れ続けるんだよなと暖かい気持ちでいっぱいになる。
 なのにストーリーが壊滅的にデタラメで、無邪気な子供の頃の気持ちに戻って作ったというより「子供ならこれぐらいで十分でしょ」的な言い訳がましさがあるというか、子供をナメてるような感じが嫌。そういう意味でロドリゲスなんかの何倍もスピルバーグのほうが子供なんだよなという、すごく当たり前のことを思った。子供と子供っぽさは似ているようで全然違う。
 3Dはこの頃特有のビックリ飛び出し系で、それ単体で目を見張るショットがたくさんあるけど立体演出の手数が少ない。最近ずっとアナグリフで『ポーラー・エクスプレス』を観返してるけど、全然あのレベルとは比較にならない。キャメロンの「俺の世界観」に引きずり込むために観客の眼球とカメラのレンズを一体化させてやるんだ的な気迫もないし、ゼメキスのような立体演出を用いた映画文法の再解釈みたいなものもない。ただ珍しい技術で遊んでいる感じしかしない。グランドハウス映画にあんまり明るくないから憶測だけど、たぶん『プラネット・テラー』のグラインドハウスオマージュとかもガチ勢からしたらこのレベルで遊んでる感じがするんだろうなと思った。
 にしてもこの時代にアナグリフ使ってまで3D映画を2本撮る気概というのは意義深いし、キャメロンもこの現場でフュージョンカメラシステムの開発の実験ができたこともあり、ロドリゲスのような「とりあえずやっちゃう人」、つまりバイタリティ馬鹿みたいな人はどの業界でも貴重なんだなと思う。アリータの3Dを観返したいのと、ロドリゲスと3Dの話をしてみたい。
 3Dに関して一点とてもいいのが、夢の世界に入り込んでからが3D、現実世界では2Dという棲み分けが(3Dメガネをかけろ、外せと指示することで)ちゃんとされていること。スパイキッズの派手なシーンで3D、みたいな感覚からしたら3D思想的な意味で随分『アバター』に近づいてる。しかも後に似たようなことを『コララインとボタンの魔女』とか『トイ・ストーリー3』が立体視差調整でやってる。本作以前でそういう感覚で作られた3D映画はあるのかな
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