わたがし

ランゴのわたがしのレビュー・感想・評価

ランゴ(2011年製作の映画)
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 ずっと観たかったのに観れないまま10年ぐらい放置してた映画。大変に好きな映画だった。「とにかく俺は西部劇を撮りたい!」が満ちすぎていて、全然西部劇とかよくわかんないのに感動してしまう。人の強烈な「好き」はいつだって感動的。
 ジョニー・デップの動きがモーキャプされたアニメーションらしいけど、明らかに手付けアニメーションの後処理がきつくて、全然モーキャプアニメ特有の生々しさがない。それともジョニー・デップの挙動が元来アニメーションすぎるからか。普通のアニメに見える。
 何より感動するのが画の美意識。ロジャー・ディーキンス監修の鮮やかすぎる照明コントラストと、ヴァ―ヴィンスキー映画の美術やセットの小汚い質感が組み合わさって、どのショットも完全なるコッテコテのクソかっこいいハイパーリアル西部劇。ところどころギリ不愉快な残酷描写・不潔描写も美しい。CGの精度ではなく演出やセンスで世界をリアルに感じれる。
 ヴァ―ヴィンスキーの演出のアクションもユーモアも何もかもちょっとだけ過剰な感じがピュアなジャンル映画臭となって若干メタなストーリーとうまく嚙み合う。そして主人公が「自分は映画(人生)の主人公なんだ」と自覚する瞬間に泣く。
「自分」ではなく、誰かから見た理想の「自分」を生きてみろ、という投げかけはバカ予算でパイレーツ・オブ・カリビアンを3本撮った人間が言うと非常に説得力がある。この後に『ローン・レンジャー』で完全にやってしまうところまで込みでヴァ―ヴィンスキーのことを愛おしく感じてきた。
 劇場公開版と完全版の2種あって、絶対的に完全版のエンディングのほうが良い。これを切ったらこの映画そのものの豊かさを根本から覆してしまう気がする。主人公の変わっているようで変わっていなさみたいな複雑なニュアンスがバカ軽く描かれていてすごいエンディング。
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