たく

ストロンボリ/神の土地のたくのレビュー・感想・評価

ストロンボリ/神の土地(1949年製作の映画)
3.7
夫とともにイタリアの火山島にやってきた難民女性の孤独と苦しみを描く、ロベルト・ロッセリーニ監督1949年作品。「ガス燈」「聖メリーの鐘」などそれまでのイングリッド・バーグマンの美しく清純なイメージを覆す作品で、島になじめず傍若無人にふるまう役柄に生来の美しさから滲み出る迫力を感じる。ただ、本作への出演がきっかけでバーグマンがロッセリーニ監督と不倫関係になり、これからが全盛期というときに役者としてしばらく不作の時代が訪れたのが何とももったいない。終盤のマグロ漁と火山噴火のシーンの迫力が半端なくて、ここを見るだけでも価値がある作品。

第二次世界大戦後にリトアニアからイタリアに逃げてきたカリンが地元の漁師のアントニオに見初められ、彼に幼さを感じつつも結婚し、彼の故郷であるストロンボリ島に移住する。ところがこの島には文化的な香りが一切なく、活火山の度重なる噴火で街並みは荒れており、地元住民にもなじめないカリンが孤独な状況に追いやられていく様子が痛々しい。そんな妻のためにアントニオが室内を綺麗に整えてあげて、彼として可能な限りの誠意を見せるのが健気なんだけど、もともと二人の価値観が違い過ぎて埋め合わせが効かない。じゃあなんで結婚したのって話だけど、カリンはとにかく難民の身分から抜け出したかったんだろうね。

夫以外の男とちょっと話しただけで不倫の噂を立てられるという村社会ならではの陰湿さが嫌な感じで描かれて、妊娠したことによって少しは気持ちが落ち着いたかに見えたカリンが、マグロ漁と火山噴火という立て続けの暴力的なエネルギーに見舞われていよいよ島からの脱出を決意する。マグロ漁のシーンはたぶん実際の漁の様子を撮ってると思うけど、とにかくすごい迫力だった。火山噴火はこないだ観た「ゴッドランド」の溶岩が流れる様子が生々しく、本作も火が噴き出てる岩のすぐそばをカリンが通り過ぎるあたりは手に汗握る迫力だった。ついに山頂に達したカリンが壮観な景色に神の存在を感じ、お腹の子を守るために神へ帰依するという幕切れは、苦しい時の神頼みに見えなくもない。
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