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火の馬のbennoのレビュー・感想・評価

火の馬(1964年製作の映画)
4.2
セルゲイ・パラジャーノフ監督作品…2作目…。

原作はウクライナの文豪コチュビンスキー『忘れられた先祖の影』…勿論、当局に狙われた作家…。

舞台はウクライナのカルパチア山地…何世代にも渡り争いが続く山岳のふたつの民族…敵同士である両家の子供たち…イワンとマリーチカの悲恋の物語…。

ウクライナの"ロミオとジョリエット"です…。

芸術性に特化した『ざくろの色』とは一転…ストーリーに説得性を持たせ、民族の信仰や伝承と共に12章に分けて綴られます…。

取り分け、『ざくろの色』では全く動かなかったカメラがこれでもかと言うくらいに縦横無尽に動き回ります…時に被写体を追いかける長回しの手持ちカメラはサスペンスフルに…また、360度のグルグル高速回転では狂騒の演出…あまりの速さに目が追いつきません…。


冒頭から倒木を視点にしたカメラワーク…その先には人物が…彼のお葬式から物語は始まります…。

その式で反目し合うペトリュクとグデニュクの両家が相見えます…そして、些細なことから口論となり振り下ろされた斧がペトリュクの家長の頭上に…。

流れ落ちる血が…真っ赤な火の馬となって空の彼方へ駆け上っていきます…なんて幻想的で優美なシーン…。

そして敵同士である両家の子供たち…幼い頃からの親友であるイワン・ペトリュクとマリーチカ・グデニュクはやがて愛し合うように…。



極彩色の眩しい衣装…ウクライナの奇異な風俗…エキゾチックな映像を流麗に描きます…。

また、珍しい民族楽器とその音色…口に咥えてバネを弾く口琴がびよ〰︎んびよ〰︎ん…音楽や躍りは常に彼らの身近にあります…。

そして雷のシーンでは点滅する青白い光や赤や黄色の静止画像…デジタル技術のない時代にとても凝った魅せ方…。



  〜〜〜⚠︎以下ネタバレ含みます⚠︎〜〜〜








その後イワンは出稼ぎに行き、ふたりは離れ離れに…

そして不幸な出来事が…。

悲壮感や虚無感をモノクロで表現するのも巧妙で、山間の川霧もとても幽玄的…生きながらにして魂が抜けたような浮遊感…。


新たな人生を歩もうとするも…辿る道は…??
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