だいりにん

MIND GAME マインド・ゲームのだいりにんのレビュー・感想・評価

MIND GAME マインド・ゲーム(2004年製作の映画)
4.8
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観て思い出した映画。マルチバースを明確に描いた訳では無いが、人間が持つ無限の可能性の素晴らしさを描いたロードムービーで、その一端ではエブエブと同じく無数に枝分かれする可能性の世界が描かれていた。(書いたあとでホントにエブエブに影響があったと知った😲)

漫画家を目指すフリーターの西。ある日初恋のみょんちゃんと再会し彼女の家へ招待されるが、彼女の一家は親父の借金のせいでヤクザに追われていて、西は押し入ってきたヤクザのとばっちりで間抜けな死を遂げる。神様から死後の世界への道を示される西だったが、呆気ない人生の幕切れを良しとせず逆走。神様が不可能と断言した現実世界への逆走を奇跡的に成功させた西は、殺される直前の世界に復活。ヤクザを返り討ちにして、みょんちゃんとその姉を連れてVSヤクザのカーチェイスに突入する。

創作の中では奇跡が起こりがち。それこそ創作のいいところなんだけど時に非現実的すぎる創作に嫌気することもある。本作で起こる奇跡はあらすじの一個に留まらず数え切れない奇跡が物語を紡いでいく。奇跡的に復活した西は愛する人とともに車へ乗りヤクザから追われる。そして奇跡的に逃亡成功、奇跡的に生還、奇跡的な新生活を送る。そんな無数の奇跡は無意味に出現した代物ではなく、主人公の前に用意された数多の選択肢、そのひとつの結果だった。奇跡を起こすための選択肢を決め打ったことで劇中では馬鹿馬鹿しいほどの奇跡が連続する。本作は道なき道を奇跡で切り開くロードムービーで、恋愛もバイオレンスも前衛芸術もエロスもアクションも盛りだくさん。その違法建築のようなごちゃまぜ感もまたエブエブに通じた。粗さが味を出すアニメーション、キャラクターデザインは好みが別れるし、男心をくすぐりすぎるきらいがあるが本作は、緻密さが持ち味の新海誠作品とはほとんど対極にある無形のイマジネーションを形にした個人的最高傑作。