だいりにん

セルビアン・フィルムのだいりにんのレビュー・感想・評価

セルビアン・フィルム(2010年製作の映画)
2.8
記憶を消して二度と思い出したくない怪作

あらすじと前評判、それ以上の情報なく鑑賞しました。

何かが爆発しそうな予感で張り詰めた長い導入を越えると、人間という種族を挑発するような倫理観無視のゴアシーンが到来する。臓物や脳漿の飛び散るシーンが続くわけではない。肉体への責め苦、精神への責め苦双方が鋭く飛び込んでくる。全編血染めの高カロリースプラッターの方がよっぽど心臓に優しいだろう。

ストーリーは悲惨さを極める。元ポルノスターの男が家族のために再びポルノ映画に主演する。しかし蓋を開けてみればそれは常軌を逸した極悪スナッフフィルム。男とその家族は激動の果てに最悪の結末に到達する。救いのない展開が続くわけだが、最終盤には救いが残されていて、むしろその救いこそが家族を追い詰める最悪のマスターピースだった。実際に物語を辿るとその展開はかなり精密で、飛び道具のようなゴアシーンがこの映画のイカれ具合を増長させる。数回発生するこの映画ならではのゴアシーンには、人間の想像力のすばらしさを思い知らされる。