アンテイルフー

処女の泉のアンテイルフーのレビュー・感想・評価

処女の泉(1960年製作の映画)
3.7
少女が理不尽に暴力を受けて殺害される事件は、現在でも起こっていて、この映画が製作された1960年でも、映画の時代の中世でもそれは同じ。
人間の神への信仰の強さは時代によって変わったが、人間が犯す犯罪はキリスト教以前から今現在も変わらず起きている。
この映画の時代設定を中世にしたのは、たぶん、罪のない少女が理不尽に殺されることに神は関係ないと強調したかったからのような気がする。
中世は宗教の影響力が強い時代だった、でも人は罪を犯した。かといって宗教の影響力が中世より弱くなった現在も同じように残虐な犯罪は変わらず起きている。宗教に代わって科学や自由主義の影響力が強くなっても、罪を犯す人間は減らない。
この映画は宗教をテーマにしていると言われているがそうなのだろうか。神は関係なく、人間の心に神にもどうにも出来ない問題があることを描いた映画のような気がする。
この映画の主人公の父親は、娘を殺した人間に復讐をする、でもそれだけ娘のことを愛していたとも言えて、この父親をキリスト教の世界観でも善か悪か裁くことは出来ないと思う。
変な話、この父親は人の作った法律でしか裁けない、ラストは神の純粋性の表現のような気がした。