櫻イミト

怒りの葡萄の櫻イミトのレビュー・感想・評価

怒りの葡萄(1940年製作の映画)
3.0
アメリカのノーベル賞作家ジョン・スタインベックの同名小説(1939)の映画化。1930年代、農業の機械化を進める資本家たちと、オクラホマの土地を追われカリフォルニアに移っていった貧困農民層との軋轢闘争を背景とする物語。原作は資本主義の矛盾を告発する小説だが、映画では家族の生きざまに重点が置かれている。聖書からの引用が多く、タイトルの”葡萄”は神の怒りによって踏みつぶされる”人間”を意味する。

オクラホマを追われた農家のジョード一家13人は全財産でおんぼろトラックを買いルート66を辿ってカリフォルニアを目指す。過酷な道程に年寄りは死亡し、やっと到着しても大恐慌で仕事は無かった。貧民キャンプを転々としながら何とか日雇い労働にありつく日々。やがて家族は国営キャンプ場にたどりつく。。。

聖書の影響が強いため、主人公たちにはずっと過酷な試練が続く。自分の日々の生活の甘っちょろさに喝を入れられた。個人的には途中でパンを買った店での人々のやさしさに胸を打たれた。一家の将来に不安と希望が相半ばする感じで映画は終わる。重厚な大作だがその先も見たかった。

※原作ではその先が描かれ、納得のいく終わり方をしている。
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