純

アンナの純のレビュー・感想・評価

アンナ(1966年製作の映画)
3.6
くるくる回る表情、自由でのびのびとした仕草。アンナ・カリーナの永遠が、一瞬一瞬、鮮やかという言葉では控えめすぎるほどにはじける。まどろこっこしい展開とは対照的に、いろんな顔を見せてくれる彼女を、彼女を探す彼よりも必死に追いかけてしまう。

アンナの魅力が桁違いだからこそ、空っぽのように思えてしまうストーリーも、フランスの美に対する独特のリズムがあるのかもしれないと思う。ロマンチックはひとつではないから。ひとは何もないままには動けないんだな、と寂しいため息が出た。愚かで、自信がなくて、なんで大切なことだけが見通せなくなってしまうんだろうな。すくいあげたと信じる手の中から、大事なあのひとだけが、今夜もすり抜けてしまった。

それでも言いたかったのにな。そう思うだろうことも、きっとずっと前からわかっていて、言えないからわたしたち人間なんだわ、と思う。何度だって唱えたのに、もう届けることができない心の揺れを、わたしをどこか遠くへ連れて行くこの電車の揺れに紛れさせてしまって。
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