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男たちの挽歌のギズモXのレビュー・感想・評価

男たちの挽歌(1986年製作の映画)
4.9
「俺は失ったものを取り戻したいんだ!」

僕がジョンウーの作品を知ったきっかけは、たしか『マックスペイン』をプレイした時で、『ハードボイルド』『狼』そしてこの『男たちの挽歌』といった順で鑑賞してたと思う。
とにかく最高にシビれるシリーズだ。

当時カンフーとコメディだけだった香港映画に新しい旋風を巻き起こした、説明不要の香港ノワールの金字塔。
ガンアクションの歴史に名を刻む伝説的傑作。

ジョンウーの作品には一貫したテーマがある。
"強く正しく人のために生きろ!"
たとえそれがどれだけ人から蔑れようとも、どれだけ道のり長くとも、理想を探して歩み続けようという熱い思いが強く込められていた。
この願いは、抑圧が広がり、未曾有の大惨事が起こりつつある今の時代にこそ必要なものだと僕は思う。

ここからは超個人的な感想だ。
この物語は間違いなく、新約聖書に記されている放蕩息子の例え話がベースになってるよなと確信している。
ジョンウーは幼少期、キリスト教の迫害から逃れるために香港のスラムに逃げて、貧しい生活の中でも教会と映画に支えられて育ち、教会の援助を受けて進学したという経緯があって、だから彼が手がけた作品の根幹にはキリスト教の教えがおのずと入っていた。
このことはスコセッシの作品にも同じことが言えると思う。
僕もクリスチャンの家庭で育ったから、完璧とはいえない何かしらの弱さを抱えた者達が、銃と血にまみれながらも信念を貫こうとする姿を最初に観た時、もの凄く励まされて、自分のための映画だと心の底から思ったよ。

僕の中には、弟に許しを得ようと贖い続けるホーが、
兄を許せず、がむしゃらに戦い続けるキットが、
そして、たとえドン底に落ちようとも決して諦めず、自らの手で運命を切り開こうとするマークがいる。
それはみんなも同じだろ?
弱さの中にこそ強さがある。
諦めてなるものか。

《いつまで おまえたちは不正をもってさばき
 悪しき者たちの味方をするのか。  
 弱い者とみなしごのためにさばき
 苦しむ者と乏しい者の正しさを認めよ。
 弱い者と貧しい者を助け出し
 悪しき者たちの手から救い出せ》
[詩篇 82篇]

【追記】
4K最高でした。
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