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裸の太陽の一のレビュー・感想・評価

裸の太陽(1958年製作の映画)
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鉄道映画 meets 労働者青春ロマンス。機関助手・江原真二郎と女工・丘さとみ、将来を決めた二人の結婚資金1万7千3百円。目標の10万円まではまだ遠い。単位の小さい金勘定に暇がないそのしみったれ度合いに、見てるこっちも思わず頭の中で家計簿つけて始めてしまう。キズもの大売出しの海水着にも「高い」とケチをつけ、店の主人・柳谷寛がハサミを取り出しチョッキンで男女一組400円ポッキリに。嬉しそうに穴あいた海水着を抱えてふらっと寄った夜の公園のシーン素晴らしい。長い人生の“行き止まり”が目に見えていて、高望み出来ないこともわかっていて、だから恋人たちは今この瞬間キスせずにはいられない。ここしばらく観たうちでも屈指のキスシーンにちょっと泣く。貧乏なくせになんて健康的なんだ。行けず終いだった海水浴のかわり、夜のプールに忍び込むエンディングも最高。鉄道映画としては『指導物語』と同様に宮島義勇によるSL走行シーンが抜群なのはもちろん、田舎と地方都市の風景もとてもイイ。酒飲み産婆・飯田蝶子が笑いをかっさらうが、最後の最後にいいとこ持ってく花沢徳衛&チョイ役の駅長・神田隆と『警視庁物語』コンビの出演も嬉しい。
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