どびぃ

張込みのどびぃのレビュー・感想・評価

張込み(1958年製作の映画)
4.3
冒頭、佐賀までの電車移動を延々と。これにまんまと引き込まれる。そして「さ、張込みだ」のセリフとともに出るタイトルバック。大木実の顔に思い切り被せる斬新な構図に「ありきたりな作品にはしない」という監督の意気込みがのぞく。
何と言っても白眉はカメラワーク。「裏窓」的描写は観客も一緒に張り込んでいるようなスリリングさ。建物外のクレーンで一階から二階へと移動。これもヒッチコック風。他にもローアングルで人物の後ろの背景をふんだんに写し込み、そうかと思えば俯瞰に転ずる。幾何学模様の田園地帯を疾走する車は空撮で見せ、山道を車体を軋ませながら走るタクシーも迫力満点。車内撮影はもちろん合成ではない。
撮影ばかり褒めてしまった。
他人の人生を観察しながら自分の人生を見つめ直す構成もいい。ラスト、自分に言い聞かせるように、犯人に人生のやり直しを説く刑事。やり直しの長い道のりを暗示するかのように、佐賀から東京へ復路の停車駅がひとつずつアナウンスされる。
それにしても高峰秀子には心に埋み火を抱えた女の役がよく似合う。
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