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張込みのtackyのレビュー・感想・評価

張込み(1958年製作の映画)
4.5
輝かしい野村芳太郎×橋本忍の松本清張作品の出発点の作品。

いまだに多くの映画研究の題材とされている、オープニングの映像が素晴らしい。
横浜から飛び乗った刑事二人が、真夏の混雑する車両の中、佐賀まで一日かけて旅する様を、旧国鉄協力のもと一車両借り切って撮った映像はリアリティ満載で、当時の汽車の旅の過酷さと、これからの張り込みの困難を表していて、最後に佐賀に着いた大木実の「さぁ!張り込みだ!」の言葉まで12分。凄いアバンタイトルだ。

それまで、プログラムピクチャーの喜劇ばかり撮らされていた野村芳太郎が、同じく若手の脚本家、橋本忍と組んで初めて撮ったサスペンス。
とことんリアリティを大切にして、昼の2時のシーンは本当に2時に撮るなどを徹底して、雨が続くと撮影を延期するなど、公開が半年ズレた。

意外にアッサリ終わるラストだが、
少し号泣した高峰秀子が、意を決してブラウスに手をかける所で、また退屈なモラハラ夫と義理の子供三人の後妻生活に戻る切なさ。
ほんの一瞬だけ、昔の恋人の逃走犯との逢い引きにみせる、女の煌めき。
逃走犯も後妻も、はずみに歯車が狂ってしまっただけの普通の人なのに、世間に翻弄される所。
作品の中に刑事二人の聞き込みと張り込みによって表される、人生の切なさを表現する映像の数々。

珠玉の二時間だった。
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