ユーライ

新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にのユーライのレビュー・感想・評価

4.8
こんなカルトアニメが大衆向けな面をして堂々としているのが凄い。TV版弐拾五、六話の再挑戦。「Air」は存外動的な中身で「まごころ」と併せてバランスを取っている。監督の「気分」がそのまま反映されたとすら思える終始「何もしたくない」と石になるシンジの状態、ダウナーさはそのまま本編全体の雰囲気に繋がっている。TV版と比較して劇場版ならではの贅沢さでキャラクターデザインの頭身も上がり、画面全体がエッジを効かせて色っぽく。それはタナトス=死の気配で、二号機対量産機における見惚れる程のロボットアクションで強調される重心、慣性を感じさせる「重さ」は冒頭の病床に伏すアスカのベッドを揺らすカットから既に発揮。人間対人間の血塗れの恐ろしさ、怖さへの説得力に繋がる。最早ロボットが殴り合っても解決出来なくなった状況。皆死ぬ結末が分かっていることから来る奇妙な居心地の良さ。「大人のキスよ」の爛れ方とか、最高。いちいち表情も良くて、実写じゃ出来ない塩梅になっている。わざわざテレビのフォーマットに則るのは監督の趣味性もあるが、「終劇」でスパッと終わらせるためのアリバイ作りでもある。裏設定を理解しなくても逐一台詞で説明しているから恐らく全然問題がない、人物の感情が克明、ここまで晒すのがいいのか悪いのかはわからない。間違いなくハッピーエンドで、散々考えた挙句「やっぱダメだわ」に陥るのが極めて誠実な形、主題である「手」を交錯せずとも。絞殺する頬に手を寄せることは出来る、そして緩める思いの一つの形なんだあれは。「気持ち悪い」よりも至るまでの微妙なカッティングや音、動きの方が重要。なんか「四畳半」的なものが見えた気がするけど、多分当たってる。
ユーライ

ユーライ