ヤンデル

マルホランド・ドライブのヤンデルのレビュー・感想・評価

マルホランド・ドライブ(2001年製作の映画)
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・マルホランド・ドライブはハリウッドに実際にあるドライブウェイで、サンセット大通りにも近い。

・元々はドラマのパイロット版(ドラマを実際にやるかどうか判断するための試作フィルム)として作られたものが最初の90分ほどであり、その時点では物語のオチは考えられていなかった。そのため、後半は後付けで物語のオチをつけたものになっているが、明確に回収されていない伏線があるのはそのためである。

・基本的には、青い箱を開けて箱の中の闇にカメラが入っていくシーンより後が現実のシーンで、それより前はダイアン(ナオミ・ワッツ)が夢や妄想で見たシーンとなっている。しかし、後半のシーンは時系列順ではなく、一部は後半にも妄想が混ざっているため、複雑化している。

・現実に起こったことは、以下のような経緯。ダイアン(ナオミ・ワッツ)とカミーラ(ローラ・ハリング)は恋人同士であったが、カミーラがレズビアンにも関わらず、映画の主演を勝ち取るために監督と関係を持ち、さらに別の女性の恋人も作っていた。そのため、ダイアンは激怒し、叔母の遺産を使って殺し屋を雇ってカミーラを殺そうとした。しかし殺し屋は失敗し、依頼をしたことを漏らしたためにダイアンは刑事に追われることになり、拳銃で自殺した。

・そのため、ダイアンが拳銃で頭を撃ってから死ぬまでに見た夢が前半となっており、そこには現実で見た出来事や登場人物が意図せず織り混ぜられている。実際に人が見る夢も現実で見たことが意図せず混ざることから。

・冒頭のジルバを踊る男女たち…ダイアンの叔母がジルバの大会で優勝した

・最初の事故のシーン…リタがマルホランド・ドライブを走る車に乗っていて殺されそうになっているが、パーティーに行く時のドライブとダイアンを殺そうとしていたことが混同されて夢に現れた。

・ベティ(ナオミ・ワッツ)が空港に着くシーン…ここで別れる老夫婦は実際にはダイアンの両親?最後のシーンで親への申し訳なさとしてダイアンを責めるように見受けられる。

・ベティの叔母…実際にはパーティーで会った監督の母親だった。

・ウィンキーズというファミレスで夢を見たという男がホームレスを見て死ぬシーン…実際にはダイアンが殺し屋に依頼をしたファミレス。そこで見かけた男だったが、これらもダイアンの夢の中の話。

・リタが大金と青い鍵を持っていたというシーン…本当はダイアンが殺し屋に渡した大金(叔母の遺産)と殺し屋が仕事完了の合図に使った青い鍵が変形したもの。青い鍵は現実のシーンが始まるキーになっている。

・映画監督が主演女優を決める圧力をかけられ、拒否したために映画が中止になるシーン…ダイアンは自分が主演になるべきなのにカミーラが主演になった、そこにはハリウッドの大きな裏組織が絡み、口座を止めたり、カウボーイなる謎の人物を使って脅迫されたという背景があったという妄想。カミーラの写真や、カウボーイはパーティーで見かけた人物から。

・殺し屋が意図しない殺人を繰り返してしまうシーン…ダイアンが依頼した殺し屋が失敗したために、ドジを踏んだという妄想。ここで、長髪の男を殺して黒い本を持ち去るが、これは伏線として回収されていない。

・映画監督が妻を掃除屋に寝獲られ、家を追い出されるシーン…豪邸から追い出されるのは当然、浮気をした妻の方である。ダイアンが監督を恨んでいるために創られた妄想。

・リタがウィンキーズで店員の名札から自分の名前(ダイアン)を思い出すシーン…ダイアンが殺し屋に依頼したシーンでは、名札は「ベティ」だった。これは妄想の中でのナオミ・ワッツの名前となる。

・リタとベティが自宅を探して隣人に会うシーン…このあたりからが、映画化に際して後付けで撮られたシーン。隣人はダイアンと部屋を交換し、食器と共にランプシェード、灰皿を持っていった人物。顔が変形した死体は本当は自分の死体だった。

・リタとベティが愛し合ったあと、深夜にショーを観に行く、その後に青い箱が持ち物から現れると2人は思い至って青い鍵で開けようとするが、ベティが消え、リタも消えてカメラは箱の中に入る。ここから現実で起こったことの描写が始まる。

・ダイアン(ナオミ・ワッツ)の部屋に隣人が食器とともにランプシェードと灰皿を持って行き、刑事が来たと告げる。そのため、ランプシェードの下の電話が鳴るシーンや、ピアノ型の灰皿があるシーンはこの場面より過去ということになる。

・監督が演技指導としてカミーラにキスをするが、明らかに演技指導の域を超えており、ダイアンは二人に嫉妬し恨むようになる。

・泣きながら自慰行為をしているのは、カミーラのことを思い出して自慰をしながら泣いていると捉えられる。このあとパーティーのシーンがあるが、時系列的には逆と考えられる。

・パーティーのシーンではダイアンは「シルビア・ノース・ストーリー」のオーディションでカミーラに出会ったと話す。これは前半で監督が圧力をかけられて中止になった映画のタイトルと同じ。

・最後に、ダイアンは刑事たちのノック、ドアの下から這い出す両親のイメージに追い詰められ、銃で自殺する。

・オーディションシーンの前にクラシックカーが出てくるが、これは「サンセット大通り」の劇中で使われたクラシックカーの実物が使われている。「サンセット大通り」では、冒頭の死体がなぜ死ぬことになったのか語る場面から始まる。リンチはそのオマージュのためにラスベガスからクラシックカーの実物をわざわざ取り寄せたという。

・オーディション内のシナリオはヒッチコックの「汚名」のオマージュとなっている。「汚名」の当時ヘイズコード下のハリウッドではキスするかしないかのラブシーンはギリギリであり、2分半ほどでハリウッドの記録とされていたが、リンチはこの記録を破るために4分近いラブシーンをわざと作った。
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