こたつむり

ヒルズ・ハブ・アイズのこたつむりのレビュー・感想・評価

ヒルズ・ハブ・アイズ(2006年製作の映画)
3.2
♪ 赤い瞳はソドムの街で美しい女を採集する
  針で止めた蝶や蛾のように
  動けないおまえは 俺のもの

荒涼とした風景の中で感じる視線。
禁忌の地に踏み入れた旅人は、その不運を血で支払うのであった…という物語。

公開当時、発禁騒ぎもあったそうですが…。
確かに“放射能汚染”をネタにしたホラーですからね。被爆国である日本で拒否反応が出るのも当然の話。

しかも、根底には核実験への批判がある…ように見せかけて、本当は露悪的な趣味を炸裂させているだけ。カタルシスを煽るような楽曲は言い訳できません。また「何故、旅人が襲われるのか?」に対する回答が提示されないのも、露悪的だと思う理由のひとつです。

確かに劇中で全てを語る必要はありません。
不明瞭な部分が多いのはホラー映画としては常套手段。暗闇の中に潜んでいるから“恐怖の対象”となりえるわけで、太陽の下に出てくれば“枯れ尾花”だと見破られますからね。

しかし、本作の場合。
旅人を襲う“奴ら”に言語が通じるのですよ。
中途半端に輪郭が明確になっている以上、襲う理由だけを曖昧にする必要はないと思うのです。この辺りはオリジナルの『サランドラ』を鑑賞すれば分かるのでしょうか。

ただ、どちらにしろ「不謹慎」なのは変わりなく。枯葉剤の結果を用いた“指先が痺れるオープニング”も誤解を招くと思いますからね。監督の伝えたいことは分かりますが“事実”に対してはもう少し慎重になったほうが良いと思います。

まあ、そんなわけで。
アレクサンドル・アジャ監督が手掛けた…ということで鑑賞しましたが、センセーショナルな題材を用いながらも“出オチ感”満載の物語でした。なお、18歳未満お断りの作品なので、ご留意の程を。

…それにしても、本作が公開できるなら『ウルトラセブン』の第12話も大丈夫じゃないのかなあ。
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