武倉悠樹

英国王のスピーチの武倉悠樹のレビュー・感想・評価

英国王のスピーチ(2010年製作の映画)
4.0
立場の違う人間の間に生まれていく信頼関係と一人の男が境遇やトラウマを超えていく成長のドラマ。ドキュメンタリー的な側面としても非常に面白かった。王と平民から主治医と患者という関係を超えて友人として繋がりを深めていく過程は非常に共感を感じられた。ただ、その共感性が問題なのかもしれない。「王」と言う超越性がもたらす絶対的な孤独と圧倒的な重責、そして、それ故に生み出される心象風景、それは吃音の症状とも関係があるんだけど、それが少しあっさりし過ぎていた気がする。

「王」と言う存在はドラマティックと言う点で圧倒的な魅力を持っているモチーフな気がするんだけど、それを共感できるエンターテインメントに仕立てるのは少し難しい。受け取る人間に共感されてしまった点で「王」の持つ孤独は風化してしまう。日本の「皇室」と英国「の王室」、それぞれの開かれ方の差からくるイメージの違いもある気がするけど。
武倉悠樹

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