武倉悠樹

いつかの君にもわかることの武倉悠樹のレビュー・感想・評価

いつかの君にもわかること(2020年製作の映画)
4.0
 大分素材の味と言うか、設定そのまんま。若くして病に侵され余命が限られたシングルファーザーが、息子を託す里親を探しながら、自らの命や子供との関係について懊悩する話。
 設定からしてハッピーエンドになるわけがないわけだけれども、それでもそれを過剰に演出してドラマチックに仕立てるわけではなく、登場人物たちの葛藤の深さに比して淡々と映画は進んでいく。
 様々な価値観を持つ里親たちとの対話を通じて、若くして子を残しこの世を去らざるを得ないという特殊な状況にだけ言えることではない「親が子に遺せるものとはなんなのか」という普遍的なテーマについても考えさせる造りになっているのが良い。

 一方で、以前から子供が不遇な目に合う設定の映画を観ながらずっと考えている”子役”についても考える。
 里親を探してくれる公的な相談員からの薦めで、ちゃんと子どもに自身の死について話すべきだと言われる一方で、主人公は「そのこと教えるには、まだ息子は幼すぎる」と思い悩む。ここで、やっぱ思わざるを得ない。いや、でもこの子役はそのことも全部含めて説明をされたうえで、父親を亡くす少年という演技を(あえて、強い言い方をするが)させられている訳でしょ?それどうなん?って。
武倉悠樹

武倉悠樹