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心中天網島のodyssのレビュー・感想・評価

心中天網島(1969年製作の映画)
3.0
【岩下志麻の限界】

篠田正浩監督作品、1969年、モノクロ。 

近松門左衛門原作の映画化。 
ただし黒子を登場させるなど、人形浄瑠璃的な雰囲気を濃厚に出して、アートとしての映画を強く意識した作品である。 

そういうところはまあまあ面白いが、愛し合う男女の心中というテーマでいうと、増村保造の 『曾根崎心中』 にどうも見劣りがする。 

男女の強い愛情や、女の気迫に満ちた情念という点で、観客に迫ってくるところが希薄だからだ。ヒロインの遊女は岩下志麻、妻子がありながら遊女に惚れる男が中村吉右衛門、その健気な妻を岩下志麻が二役で演じているところが見どころか。 

これは、女に対して家庭の良き妻と性的魅力のある遊女という二面性を求める男の心情を表現しているのだろう。ただし、岩下は家庭の良き妻の方はうまくやっているが、遊女の色っぽさではもう一つ。 

なお、私が見たとき、フィルムの状態がかなり悪かった。
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