元レンタル担当

グラン・トリノの元レンタル担当のレビュー・感想・評価

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.6
【あの激動の時代を乗り越えたタフガイは現在ではなりをひそめ…】

▪️背景にあるアメリカの根深い闇
人種差別…
人間は常に他者と比較する生き物である。
未だにアメリカ社会で根深く残っている負の連鎖。前もってそうなる運命だったかの様に多民族国家として建国されたアメリカ。
国籍も文化も宗教すらも異なるという状況で完全に理解しあうことは不可能だと思っている。
非情に聞こえるかもしれないが…
アメリカが建国された時点で“差別と表裏一体となって誕生した”のが事実である。

▪️十字架を背負って生きる影のある主人公
皮肉まじりの荒々しい口調で周りと距離を置く孤独な親父はその頑固な性格から身内とも疎遠になっていた。
そうなってしまったのは過去に犯した過ちが彼を変えてしまったから。
だが、その性格とは裏腹に困っている人を放っておけない人情味深い部分もあるので不思議と周りに人が集まってくる。
皮肉なアメリカンジョークを吐きながらもその背景に闇を抱えたキャラクターを演じる姿が様になっている。

▪️ 主人公を取り巻く人間模様
本編は人種差別の対象になる登場人物達を物語の中心に配置しているのが特徴的。
典型的なステレオタイプの主人公が隣に引っ越してきたアジア系民族との交流を通して次第に差別と偏見で塗り固められた心境に変化が表れる。

▪️因果応報な展開
結局、自らの行いが巡り巡って己に返ってくる。
評価を分けるのは…やはりラストのあの展開。
『ダーティハリー』をはじめタフガイのイメージを確立したクリント・イーストウッド。
ストーリーの落とし所をつけるためになんとなくそうなるだろうなという予想はついていた。
ハリー・キャラハンのような手段を選ばない主人公ならラストのあの展開にはならなかっただろう。
だが、アジア系民族の家族と過去に犯した過ちとが重なって自ら重荷を降ろしたという解釈をしたら納得できる。
そして、差別や偏見に国籍や年齢も超えた友情が存在する…といったメッセージすら込められている。


グラン・トリノと共にその託した意志は永遠に受け継がれて行く…。

〜それでは皆さんいい夜を🌙〜

※ 録画していたのを鑑賞(WOWOWプライム)
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