シネラー

エクソシスト/ディレクターズ・カット版のシネラーのレビュー・感想・評価

4.5
言わずと知れた名作ホラーだが
場面を知っていても未鑑賞だった為、
午前十時の映画祭を機に初鑑賞。
紛れもないオカルトホラーの傑作であり、
重厚で丁寧な人間ドラマだった。

少女リガーンに憑依した悪魔と対峙する
神父達を描く内容だが、
そのオカルトな内容を最初から
展開していくのではなく、
神父やリガーン親子といった
個々の現実味ある物語から発展していく
のはとても興味深かった。
娘リーガンの異常行動から
必死に医者へ頼っていく母親クリス、
家庭内の死別から
信仰心が揺らいでいるカラス神父、
その人物達が対面するのが中盤以降であり、
それまでの過程が念入りに描かれる事で
現実的な話からのオカルトホラーへの
移行がとてもスムーズだと思った。
その上でミーガンの病院での検査場面
から生々しさと痛々しさがあり、
正直言うと後の悪魔の描写よりも
こちらの方が現実味を帯びているだけに
怖いと思った。
しかし、そんな事を思いつつも
悪魔が本格的に表出する後半も
血の気が引く展開の連続ではある。
ドスのきいた低い声で罵詈雑言を放ち、
ブリッジ体勢で階段を降り、
緑色の液体を吐き出し、
首が180度に回るといった
悪魔に憑依されたリーガンの描写は、
少女が行っているからこその
独特な不快感と悲劇性が
交わっていると感じられた。
更に恐怖場面で印象的な怖さを
発揮するのがサブリミナル的に現れる
蒼白な悪魔の顔だが、
絶対に暗闇で見たくない顔と言えるだろう。
象徴的な本作のテーマ曲を劇場で聴ける
のはとても嬉しく、
エンディングまでゾクゾクしてしまう
テーマ曲だと思った。

気になる点としては、
悪魔祓いの経験があるメリン神父が
冒頭で登場してから満を持して
終盤で登場するにも関わらず、
大した活躍をしないのは残念だった。
又、カラス神父の母親との描写が、
端的に場面と時間軸が展開していく
のは戸惑う部分でもあった。

オリジナル版公開から50周年、
監督であるウィリアム・フリードキン
も今年の8月に亡くなられ、
12月に新作が公開される節目に
本作を劇場で拝めたのは良かった。
上映前の予告で最新作の予告が
あのテーマ曲と共に流れたのも
嬉しい縁だった。
紛れもなくオカルトホラーの傑作であり、
オカルト一辺倒にする事なく、
現実的な展開による悪魔の存在を
懐疑的に描く見事な傑作だと思った。
シネラー

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