ちろる

ウンベルトDのちろるのレビュー・感想・評価

ウンベルトD(1952年製作の映画)
3.9
イタリアのネオリアリズモ作品といえど、今の私たちも他人事とは決してお前ない年金貧乏老人の姿。
誇り高き公務員として長年働いていた過去はあれど今や下宿宿で疎まれる独り身老人。か犬と老人。貧しくも互いに愛し合うその姿は切ない限りなのですが、世の中はそんな一人と一匹に容赦ない。
生き抜くために金策に走るウンベルトにとって飼い犬フライクの存在が常にネックになるわけですが、唯一の大切な家族を誰かに預けたりするなんてことは出来ず、運命共同体のように寄り添い続ける。
ウンベルトが最低限のプライドを捨てられず、ホームレスになっても身だしなみを紳士らしくする事と同じように、彼にとってフライクが居る事というのは生きる原動力として絶対的なもの。
画面が変化するたびに悲劇的な状況は悪化して彼らの行き先に希望の光は一筋も差さないけれど、ウンベルトにとっての光はフライクなのだと思えば、フライクがこれからもどうか元気で生きてて欲しいと願うばかり。
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