このレビューはネタバレを含みます
クローンものでは定番である設定やプロットを丁寧に丁寧に仕上げることで出来上がった映画という印象。
そのため予想を超えた意外性にはぶつからなかったが、総合的な完成度は高いように思う。
舞台が月なのが良い。火星ではこの雰囲気は出なかったはずだ。
記憶を共有している二人のクローンだが、年齢や経験により性格や言動に若干の違いが生まれており、この二人の関係性や心象を通して物語が細やかに描かれている。
閉鎖空間で正体不明の相手との交流という展開はソラリスっぽいが、こちらは他者ではなく自己に方向が向いており、あれとはまた別種の痛々しさがあった。
人工知能ガーディに関しては偉大なる先達HAL9000のおかげで完全に警戒の目で見てしまったが、最後まで主人公に親身な可愛らしいキャラクターだった。
それだけに、サムのガーディに対する態度がやや淡白に感じ、一方通行に見える。クローンたちの間の関係性の描き方が丁寧だったので余計にそう感じるのだろう。
懐かしいSFというような作りだったので後から公開された年を確認して思ったよりも最近だったことに驚く。監督の狙い通りということか。