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着信アリのStroszekのネタバレレビュー・内容・結末

着信アリ(2004年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

約20年前の映画である。「そうそう、2003年くらいの女子大生ってこういう感じの服装だったよねー」と思った。

ガラケーを活用したホラー映画で、すでにガジェットの見た目が古色蒼然としている。ストラップやデコレーションが懐かしい。iPhoneの登場は2008年のことで、やはりこの年はエポックメイキングだったのだ。

虐待が一つのテーマ。水沼毬恵が代理ミュンヒハウゼン症候群を患った虐待母かと思いきや、長女の美々子が次女の菜々子を虐待していたというどんでん返しがある。

毬恵の霊を鎮める際に由美が、自分を虐待してきた実母を思い浮かべ、「ずっと一緒にいるから」と言う箇所は、『仄暗い水の底から』(2002)っぽい。しかしそうすると、由美のいまも存命する母親がいちばんのモンスターということになり、超現実的存在を恐怖の対象としているオカルト映画の論理展開としては座りが悪い。

映像は『リング』よりも『CURE』っぽい薄ら寒さだ。大学校内や団地の、灰色で塗りつぶされた感じの壁の撮り方とか。結末もJホラー的「因果は巡る」系のものではなく、ヒロインの中村由美が美々子に共鳴し、自分を助けてくれた山下弘を刺殺する(ことが示唆される)というもの。「女性が動けない男性に一方的に痛みを与える」という構図は、本作監督の『オーディション』を思い出した。しかしこれは素直に「虐待された人間は周囲を虐待する」という風に、虐待の連鎖が描かれていると解釈するべきだろう。しかし、美々子自身は虐待による心の傷を負っていない以上、由美が美々子のどこらへんに共鳴したのかはよく分からない(だって美々子は妹を虐待していた立場であり、一貫して加害者だったわけだから)。

美々子が毬恵を廃病院のバスタブで殺したのは、自分が喘息の発作で亡くなったことから同じ思いを味わわせようとして、溺死させたということなのだろう。最初の犠牲者である女子高生がスキューバダイビング中に亡くなったのも、同じ理由だと思われる。

ただ、喘息を患ったからと言って彼女が幼児とは思えないほどの嗜虐性を身につけて妹を虐めた理由はよく分からない。そこにこそ恐怖がある気がするが、その点はあまり掘り下げられない。

ホラーの構造としては「〜日後に死ぬ」系で『リング』と同じなのだが、「虐待」というテーマが組み込まれたことにより、別の種類の恐怖が紛れ込んでいる。それがうまく行っているところも行っていないところもあるように見える。
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