とらも

崖の上のポニョのとらものネタバレレビュー・内容・結末

崖の上のポニョ(2008年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

動く絵本

いつもジブリにある「現実」がない。ジブリの作品は動作はリアリズムに徹し、動ける空間を設計する(千と千尋なんか湯屋の空間的な説明は見たすぐ後に聞けば全員できると思う)。そこからエンタメ的な歪んだアクションが発生するから差異で面白くなるのだと思う(ハクが部屋に飛び込んでくるだけでも面白い)。だけど本作はオープニングから海のおとぎ話だしOPクレジットは完全に絵本だし家や幼稚園や老人ホームも空間的にほぼ死んでる。動きはリアルだと思う(宗介の動きはおっさんくさい)。冒頭の車の移動による説明であの土地の広がりは若干わかるのだが基本的にのっぺりとして広がりがない。からか沈没後の旅も全然動いてる気がしない面白くない。3.11の影響も強いのだろうけど都市伝説的な解釈が流行るのもわかる。最初から全員死んでる。
空間的に広がるのはフジモトの乗ってる船でそれを使って描かれるポニョの2度目の逃走が面白い。あとドック入りの横断のとこも面白い。空間関係ないけどアイスはいいシーン

相手をフルパッケージで愛する「真実の愛」は宮崎さんがずっと描いてるけれど、宗介はハナからポニョを金魚として好きなのだし、「社会からの視線」で「怪物」化されるポニョやその視線を内面化するポニョもこの映画にはいない。そして「他者と生活する」めんどくささなんかももちろん経験してない。そもそもの主題が大人でも堪え難い。紅の豚のポルコだって逃げきっている。子供なら耐えられるって可能性もあるかもしれんけど宮崎さんがそうは思ってないからこそ汚くなる部分を避けてるのだろうし。宮崎さんはこの世で生きることがほとほと嫌なのだろう。鈴木さんはあの歌を使って大ヒットさせたのがすごい。ありの〜ままの〜♪で大ヒットしたあれの先駆け。

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体の動きと動ける空間だけ死ぬほどリアルなら設定がいくら荒唐無稽でもそこに人がいると思えるし生活できると信じられる。多分、人間の記憶って本来そうなっていて、自宅から学校や勤務先までの道っておそらくみんなが脳みその中で没入的に再現できる。でも大人は地図的視点や時刻表的感覚で、できるだけのっぺり生きようと努力しているからその感覚を普段は忘れている。他にも例えば夢なんかだと空間的没入感のリアリティだけで設定がありえなくたって起きるまでは信じ続けたり。人間のそこらへんの機能を活用してるのが宮崎さんの作品かなと思う。子供の頃の記憶ってなんかこうより空間的な記憶。正確かは別として今でも5歳の時に住んでた家の間取りや近所の雰囲気が高低差や匂いなんかも含め身体的に思い出せる。ポニョはそこらへんに引っかかってこない。トトロは引っかかる。(家の雰囲気は断然ポニョの方が近かったのに、というのが不思議)。ポニョは子供用映画(子供向けに作った映画)というのも本当かなぁと思う。子供はどう思ったのだろう
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