坂月有子

最強のふたりの坂月有子のレビュー・感想・評価

最強のふたり(2011年製作の映画)
4.4
古来より御涙頂戴というレッテルがある。それら障碍だとか余命だとか、観衆の同情を誘うのを前提に物語の構築がなされていて、どこか悪臭がする。
しかし本作の障碍はそういった舞台装置ではない。障碍も継子も人為的な偏見でしかなく、いつの間にかこれは間違っていないと受容されていたバイアスだ。ほんの僅かに視点をずらしただけでこんなにも世界は美しいのに。

本作の主題はこの世界の素晴らしさだ。

音楽ひとつ鑑賞するにもなぜだか私達は格好をつける。オーダーメイドのスーツを着こなして、整然と隊列を作り、静寂の中でこそ楽しむものだなんて。
しかしそういった"そこにあるだけで素晴らしいもの"を歪める常識をドリスは破壊する。ドリスは無秩序ではなく、ただあるがままを愛しているだけだ。人的な作為で歪められた偏見に毅然と反論し、ただ世界を楽しむものとして知を利用する。無邪気な子どものようなあり方だ。

瞼を閉ざしたくなるほどの幸福を、その子どもの視線で私達に届けてくれるからこそこの作品は素晴らしい。名作だからだとか監督が誰だからだとかではなく、物語の素晴らしさのようなものを再認識させてくれる。間違いなく現代の傑作だ。