アキラナウェイ

未来世紀ブラジルのアキラナウェイのレビュー・感想・評価

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
3.9
もう何年も長らくの間、「きっと自分には合わなさそう」という勝手な第六感が働いて敬遠していた作品。鬼才テリー・ギリアムが描く世界観に自分のセンスがついていけるかが心配だった。

しかーし!!

そんな心配は杞憂に終わる。

レトロ・フューチャー的な世界観が堪らない。天井を這い回るダクトや、整形手術や拷問器具等、目に飛び込んでくるガジェットの1つ1つに目を奪われる。ヴィジュアル面ではかなり好み。

20世紀のどこか。その国を統括する巨大組織"情報省"により、国民は厳しく統制され、町では爆弾テロが頻発していた。情報省に勤務する男サム(ジョナサン・プライス)は、夜毎夢に現れる美女にそっくりなジルと出会い一目惚れ。情報省に追われる彼女を救う為に奔走するが—— 。

今やすっかりお爺ちゃんなジョナサン・プライスが何せ若い!!

そして特筆すべきは、配管工でありながら、神出鬼没な謎の男タトルを演じたロバート・デ・ニーロがカッコ良い!!アウトサイダーであり、ダーク・ヒーロー的な雰囲気が絶妙。もっと出番を増やして欲しかった程。

サムが見る夢の世界のヴィジュアルは現実世界とは趣が異なり、モーレツにファンタジック。サムは長髪で、銀の鎧を身に纏う騎士の出立ち。背中には翼があって大空を飛んでいる。正直、この格好は個人的にダサいとしか言いようがないし、彼のこの姿が写っているジャケ写が長らく僕をこの作品から遠ざけたんだ。

でもでも、侍の甲冑姿の大巨人と戦うシーンだとか、1985年という時代を考えればよく出来ている。

うだつの上がらない主人公がとにかく美女に付きまとう。これは完全にストーカーやないか!!

それでもサムとジルが良い雰囲気になっていって…。

そして衝撃のラストシーン。

救いのない結末に難色を示したユニバーサル・スタジオが勝手に30分以上短縮させ、ハッピーエンドで終わるバージョンを作ったとかいう逸話には驚き。

いや断然、テリー・ギリアムが当初から思い描いたラストシーンこそが素晴らしい。夢と現実のコントラストに魅せられる、これはきっとテリー・ギリアムのマスターピース。