このレビューはネタバレを含みます
ディストピアものが好物なので
文句なしに楽しめた。
ダクト、端末、紙。
舞台は「20世紀の未来社会」で、
人物のファッションが50〜60年代風で
小道具もレトロで超未来風なものは出てこないことからして
一昔前の人が考えた1986年の未来が描かれているということだろうか。
CGで作られた現実感のない映像とは真逆の
手触り感のある未来社会の感じがとてもいい。
悪夢のような世界だが
建物の中に迷い込んでみたいという欲求も湧いてくる。
水道管と下水管をクロスして繋ぎ変えて修理工の2人をやっつける場面は
痛快シーンとして描かれているが、自分の部屋であることを考えたら最悪の結果になっているような。
役所のたらい回しのようなことが延々と繰り返される場面を見て
現実もまったくこの通りになっていることに思い当たると背筋が凍る。
21世紀になっても無駄で無意味な紙の書類がなんと多いことか。
レシートはスマホ等の端末で情報だけ受け取ればいいだろうし
無意味なチラシや宣伝広報誌ももっと減っていいだろうに。
ディストピア社会で苦労して女性を探す過程が面白いのでそこをもっと長く見たかったがわりとあっさり見つかり、あっさり両思いに。
ピンチを乗り越えるうちに徐々に心が変化する過程を描くのが王道だが、そこを主眼とした作品ではないということなのだろう。
ラストはどんでん返しでの悲劇的結末。
なんとも息苦しい。
閉塞感のある管理社会からの脱出がテーマの作品だとするならば
自分だったらどう脱出するのかを考えさせられるし
脱出方法をなんとか思いついて実社会で試さないと
臨終時に後悔するのだろう。
※2025.3 BS松竹東急。2h48mCM含む。字幕。