青山

未来世紀ブラジルの青山のレビュー・感想・評価

未来世紀ブラジル(1985年製作の映画)
3.8

情報化管理社会となったいつかの未来のどこかの国。書類の間違いから無辜の市民が誤認逮捕され拷問で殺される。情報局に勤める真面目で普通の青年サムは、この出来事をきっかけに社会のシステムに違和感を感じはじめ......。


85年当時の未来感が今見るとレトロ感になってて逆にステキだったりするディストピアSF。
SFとは言っても、出てくる装置とかが未来っぽいだけで、過去や現在に起こっていることを描いた重厚な社会派。
「ブラジル」というタイトルは、ブラジルの話なわけではなく、テーマ曲のタイトル。閉塞した世界から逃れてこの曲のような陽気さがほしい、みたいな逆説的なタイトルなわけで、要は「ブラジルの逆」みたいな内容。ところどころワンダーやシュールなギャグがあるものの、かなりヘビーです。

描かれるのは管理社会や恐怖政治の恐ろしさ。
システムに疑問を持てばそこで世界からドロップアウト。もちろん、"システムに間違いはない"のが世界のルールなので、どんな横暴が行われようとも疑問を持つ方が間違いということになります。

そんな恐るべき世界で、よせばいいのにシステムの間違いに気付いてしまったのが主人公のサム。
空想の世界では空を飛んで天女と口付けを、でも実際は腐りかけたクソババア(母親)と母子癒着状態で親の七光でなんとか仕事ではそこそこの地位を持つ冴えない男。
そんな彼が徐々に国に違和感を持って敷かれたレールを踏み外していく様に激しく共感(このくだらない世界からの逃避への憧れ混じりの)してしまったので、ヘンテコな世界観ながらもかなりリアルにヒリヒリしながら観れました。
それだけにパイプに紙詰めるシーンはサイコーだし、「翌朝......」みたいなシーンはヒェーッてなるし、最後の余韻がヤバかったっすね。

あと、お役所仕事する普通の人たちも別に悪人ではなく、仕事として拷問をやりながら家庭では良いパパだったりするところが残酷で、茫洋とした「システム」を恨む以外にやり場のない絶望感がまたリアルですね。
比べるのもおこがましいけど私もこんな世界から抜け出してブラジルでサンバしたい、、、と思いながらも無為に日々は過ぎきけり。はぁ。うんこだなぁ。
青山

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