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世にも不思議なアメージング・ストーリーのnetfilmsのレビュー・感想・評価

2.7
 スピルバーグのTV復帰作として鳴り物入りで製作されたNBCで1985年から1987年まで放映された人気シリーズ。彼が幼い頃にテレビで観ていたCBSの『トワイライトゾーン』、またスピルバーグの監督デビュー作となった『ナイト・ギャラリー』シリーズのような超常現象を扱った様々なジャンルのエピソードを集めながら、スピルバーグ監修と大々的に歌ってヒットを記録。エピソード1は24話、エピソード2は21話からなるシリーズであり、スピルバーグは多くの原案を務めたほか、2作で監督もしている。

そのうちの1話目にあたる『幽霊列車』は、かつて列車の脱線事故に偶然居合わせ、今は主人公のおじいさんになっている老人が息子のマイホームを見に来た時に事件は起こる。急に狼狽し、今夜ここにあの列車がやってくるとお告げのようなことを口にする。そこは草むらに建てられた新築であり、線路も駅の姿もどこにもない。息子夫婦(主人公の両親)は最初は取り合わないが、おじいさんの話の真剣さに徐々に信憑性を感じ始めるもどこか信用していない。おじいさんの話を信じているのは主人公である孫だけであり、医師に鎮静剤を打たれたおじいさんはそのまま夜まで眠ってしまう。孫の少年もうとうとしていたところ、物凄い地響きと光の点滅で列車の到着にいち早く気付き、おじいさんを起こす。ここでも未知の巨大な物体が現れるのは夜も闇の中からである。少年は窓の向こうからうっすら漏れてくる光の点滅に気付き、ただただ不思議な顔でその光の方をじっと見つめている。やがて列車は新築の建物を壊しながら中へと侵入してくる。おじいさんはずっと大切に保管していた切符を車掌に見せると、ゆっくりと列車に乗っていく。この列車の到着は『E.T.』や『未知との遭遇』における宇宙船のようにも見えて来る。おじいさんの話がただの与太話だと思っているのは大人だけであり、子供が信じることは全て本当に起こりうることだというスピルバーグ流の寓話であり、大人びた子供と子供じみた大人の並びも、80年代のスピルバーグ作品を考える上で非常に興味深い。

もう一方の第5話『最後のミッション』では、爆撃機による過去23回の出撃から全て無事に生還し、仲間内でラッキー・ボーイとして重宝されていたジョナサンと仲間たちの最後の戦いを描いている。もうすぐ妻に子供が生まれ、除隊前の最後のミッションで突如敵の先制攻撃を受けたジョナサンは、機体下部の銃座に閉じ込められてしまう。日が暮れかかる頃に燃料がなくなりつつあった機は緊急着陸を試みようとするが、車輪が壊れ出て来ない。胴体着陸しようにも銃座に閉じ込められたジョナサンは即死する恐れがある。部隊の命を取るかジョナサンを救うのか?隊長は二者択一の判断に迫られるが、結局胴体着陸を選択する。今作ではシリーズ史上最もシリアスな展開である。隊長役のケビン・コスナーとジョナサン役のキーファー・サザーランドが何よりも若いし、この絶体絶命の状況の中で兵士たちの極限の判断が描かれている。その中でジョナサンがふともらす「除隊したらディズニーで働いて、たくさんのアニメを描く」という言葉は何よりも重い。遺書のようなその言葉だったが、やがて信じられない奇跡を起こすことになる。ここでも温厚なヒューマニストであるスピルバーグの演出が冴える。80年代に大ブームとなった実写+アニメーションの融合がラストの描写に一瞬だけ出て来る。これも奇跡のようなファンタジーを信じた者には、実際に奇跡が起こるというスピルバーグらしい優しさに満ち溢れた寓話である。

これ以外にも今シリーズでは、クリント・イーストウッド、バート・レイノルズ、マーティン・スコシージ、アーヴィン・カーシュナー、ロバート・ゼメキス、ジョー・ダンテ、トビー・フーパーなどスピルバーグと交流のあった多くの盟友たちが監督を務め、俳優もハーヴェイ・カイテル、チャーリー・シーン、マーク・ハミル、ダニー・デヴィートなど多くの実力派俳優が登板した。またブラッド・バードにとっては今作が記念すべきデビューとなり、この後『ニューヨーク東8番街の奇跡』の共同脚本としてステップ・アップしていく。スピルバーグ自身はこの後『太陽の帝国』の撮影により、2ndシーズンへの関与は減ったものの、1stシーズンの半分以上の原案はスピルバーグ自身によるものであり、彼の意向に沿う形で製作された。その中でもなぜ忙しい中で『幽霊列車』と『最後のミッション』のシナリオを自らの監督作としたのかを今日考えることはなかなか意義深い。
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