Violet

ミツバチのささやきのVioletのネタバレレビュー・内容・結末

ミツバチのささやき(1973年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

午前10時の映画祭にて
町山智浩さんの解説付きで鑑賞。
町山さんの解説がなかったらなんのこっちゃ理解できてなかったと思う!!

忘れないように備忘録…ᝰ✍︎꙳⋆

︎ ▼時代背景
フランコ政権末期(フランコ死去2年前)の1973年製作。フランコ政権に対する批判的な内容が含まれていないか、あらゆる芸術作品が検閲・弾圧の対象となったため、映画に暗号を散りばめて製作された。
作品の舞台は1940年頃。フランコ政権下のスペイン内戦時代。スペイン内戦の恐ろしさはピカソの作品『ゲルニカ』を見るとよくわかる。フランコは、反フランコ政権を唱えていた国民を弾圧するため、なんと他国のヒトラーにスペインのバスク地方にある街・ゲルニカを攻撃するように頼んだのだ。ゲルニカはナチスにより無差別空爆され、街が"全滅"してしまった。

▼映画に散りばめられた暗号
ミツバチは、スペイン国民を象徴していた。→ミツバチ=女王蜂に奉仕し、子供を育てることのみを存在理由とする。=フランコ政権下の独裁国家で暮らすスペイン国民。
登場する家族の4人は、それぞれ当時のスペインに生きる人々を表していた。

〖父〗
軍事政権に対抗して戦ったが敗れ、争うことを諦めた人。養蜂研究をしている。ハチの一生をまるで搾取されるかのような働き詰めの生涯として研究ノートに記述したが、それも弾圧対象となるのではないかと考えその記述を消す描写がある。

〖母〗
過去に執着し、前に進めない人。

〖イザベル(姉)〗
このスペインの独裁政権に馴染んでしまった新しい世代。本作で火は暴力を象徴しており、イザベルが焚き火を飛び越えるシーンでは、彼女が暴力を当たり前だと思い気に留めていない様子が窺える。

〖アナ(妹)〗
自分の目で観察する人。作中に出てくる内臓がバラバラの人体模型はスペインを暗示。(最後に足りないのは眼であり、眼のパーツをはめるのはアナだった。)
最後の「わたしはアナよ」のセリフは、他の誰でもない私がスペインの新しい時代を切り開いていくと言う宣言であり、制作人の願いだった。

また、アナは小屋で敗残兵にリンゴやコート、時計、酒などを与えるが、この敗残兵の死体はキリストを表しているとのこと。

▼フランケンシュタイン
アナがなぜ怪物が少女を殺したのか理解できずにいるのかと言うと、当時は少女の死の場面がカットされたバージョンが公開されていたためである。ノーカットバージョンでは、怪物が遊びのつもりで、少女を湖の中に投げ入れてしまい、結果的に死なせてしまう。幼児程度の知能しか持たないフランケンシュタインは「死」と言うものを理解しておらず、殺すつもりは全くなかったのだ。
しかし、怪物が少女を水中に投げ込む場面は、残酷すぎると言うことでカットされ、1986年に復元されるまで作品の中には含まれていなかった。少女の死の場面がカットされたバージョンは、カットが急に切り替わり父親が少女の遺体を抱いて泣き叫びながら村に走ってくる。モンスターと少女の間に何があったのか、観客の想像に任されることになるので、カットしたことによって余計に恐ろしい場面になってしまっている。アナが見たのもこちらのバージョンであるはずだ。

▼感想
『フランケンシュタイン(31)』も見てみたいなあ。アナ・トレントちゃんがあまりにも美しくて、彼女の瞳に吸い込まれそうになりました。
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