このレビューはネタバレを含みます
ずっとうまく息ができないような気持ちで映画を観終えた。大人になろうとする子供と、子供のままでいようとする子供。
イザベルは「映画で起きたことは嘘」だと言ったけど、アナにとっては"実在するもの"が本当だった。女の子も、フランケンシュタインも本当は死んでいなくて、精霊だから呼びかければいつでも答えてくれるというイザベルの言葉を信じた。
現実にも嘘はたくさんある(実際、イザベルは嘘をついてアナをからかっていた)。観念や認識でいかようにでも見ることができてしまう世界を、アナの純粋で危ういとも言える視点で切り取っていく。自分にとって本当のことにかたちを与える、そういう力が映画にはある。だから映画は決して嘘ではないのだとエリセは言いたかったんじゃないだろうか。
アナは内戦を知らなかっただろう。もう少し内戦について調べてから観ればよかったとも思った。
村に巡回してきた『フランケンシュタイン』を観たあと、歓声とも叫び声ともとれない声をあげながら、走って家に帰るアナとイザベルの様子は、映画に触れた喜びそのものを表していたように思えた。映画館で観れてよかった映画。