名匠と名高いビクトル・エリセ監督のミツバチのささやきを鑑賞してみました。
ううむ。濃密な神秘。
あらすじを見ても面白そうには見えず、実際に見てみても抜群に面白いとは思わなかったんですが、「名画を見た」という気にしてくれる作品というか。
その美しさについての評価をよく目にする作品で、その評価に違わぬ絵画のような映像は、たしかに美しかったです。
静かに淡々と進んでいくので、どう見ていいのか戸惑う時間が長いものの、ふとした時に、作品の空気を謎めきと幻想性が満たしているのに気づきます。
アナ・トレントの無垢、死に関する様々なほのめかし、油絵のような映像の質感、日本人である私にとってはまるで縁のない地の話であるという点などなど、諸々の要素が作品に寓話性を帯びさせ、なにやら不思議な気分になりました。
正直、作品の良さにどっぷり浸かれるというほどは理解が及ばなかったんですが、美しさと静かさの裏に、感じるか感じないかほどの異様さと不穏さを秘めたようなミステリアスさが、妙に印象に残る作品でした。
いつかまた見る時には、違った印象を受けるかもしれないな、などと思ったり。