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1000日のアンの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

1000日のアン(1969年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
チャールズ・ジャロット監督作。

イングランド王妃アン・ブーリンの波乱の生涯を描いたドラマ。

上映時間2時間半の重厚な歴史ドラマ。イングランド王室の愛憎渦巻く内幕劇を描いた作品なので鑑賞後は疲れでぐったりだが、その分見応えがある。

16世紀、イングランド王ヘンリー8世と結婚し莫大な富と権力を獲得した後、最終的には姦通・近親相姦等の罪で斬首刑に処せられた王妃アン・ブーリンの激動の生涯を、豪華絢爛な美術・衣装(アカデミー衣装デザイン賞)の中に描き出した逸品で、アン・ブーリンと当時のイングランド国内外の情勢を知るための教材にもなる。

アンと結婚したいヘンリー8世とスペイン出身の王妃キャサリンの離婚(ローマ・カトリックとの決別、国王至上法の制定)、ヘンリー8世からの寵愛のもと贅沢&権力欲に憑りつかれていく王妃アンの女児エリザベス(のちのエリザベス1世)出産(男児を切望するヘンリー8世の王妃への失望)、ヘンリー8世とアンの結婚に反対するトマス・モアの処刑(このお話はフレッド・ジンネマンの『わが命つきるとも』(1966)で詳しく描かれる)、姦通・近親相姦等の罪に問われ斬首刑に処せられる王妃アンの最期(ヘンリー8世と側近クロムウェルの共謀)まで、王妃アン・ブーリンの波乱に満ちた生涯を描き切る。

そして、際立つのがラストカットの秀逸さ。アンの意志を託された娘エリザベスのあどけない姿が印象的で、それと同時に、エリザベスが歩む新たな物語(のちにエリザベス1世となり世界の覇権を握っていく…)へと繋がっていく。この映画を鑑賞した後に、ケイト・ブランシェット主演の『エリザベス』(1998)を続けて観ると感慨深いかもしれません。

国王ヘンリー8世を演じた名優リチャード・バートンの傲慢で冷徹な演技がお見事。だが、それ以上に王妃アンを演じたジュヌヴィエーヴ・ビジョルドの演技が出色で、前半と後半で演技を完全に使い分けている。前半こそ素朴で清純なロマンチック乙女という印象だが、ヘンリー8世の王妃となる後半からは一転、権力欲に憑りつかれ次第に理性を失っていく姿へと変貌を遂げていく。
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