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砂の惑星のpikaのレビュー・感想・評価

砂の惑星(1984年製作の映画)
3.5
5年前に見る→忘れる→ヴィルヌーヴ版を見る→原作に興味を持つ→原作読み始めたらドハマリして一気読み→デューンロスに陥る→今作を再鑑賞

長編の原作を一本の映画にしようとすること自体が無謀ながらも、重要なエピソードを的確に抜粋し、ダイジェスト版と揶揄されようとも筋だけは追えるようにちゃんと作られている。ただ考えると、原作も筋だけで見ればシンプルな話なので、重要かつ作品の魅力である、キャラの心理や集団の哲学、宗教やら生態学やら能力の可能性など、様々な要素が絡み合う部分を盛り込むには映画という媒体は難儀なものだなと思わざるを得ない。
それでも遠い未来、遥か彼方の銀河系での話で、世界観や設定の説明も必要なのに、そこを一度見たら忘れられない奇抜なビジュアルデザインとキャラ作りで圧倒していて凄いと思う。単純にインパクトあるしかっこいい。
全員ローテンションな演技はゴシックでダークな雰囲気とマッチしつつもちょっと笑える。原作でもモノローグ的な語りは様々な人物が同じ場面で切り替わって矢継ぎ早に出てくるので原作通りなんだけど、台詞でもぼそぼそ喋るから判別しづらい笑。

原作からの改変部分で最も大きいのはオチ。大作映画の括りでの大団円なんだろうけど。次は声の武器かな。絡繰声ではなく声の弾丸みたいなやつ。フレメンに対してポールの凄さを一瞬で理解させるための改変なのだろう。映画的には強さの違いや教育という点でわかりやすくはなってる。他には、すんなり見れるように宗教部分はキリスト教というか、誰もが知ってる「神のなんちゃら」で、説明なく存在している。ギルドの航宙士のビジュアルは最高。原作だと人間だったので面白い。

アリアが終始可愛かった。ナイフとゴムジャッパールを両手に持ってふわりと踊るシーンが素晴らしい。
夢のシーンも素晴らしい。センスの領域なのか、ヴィルヌーヴは「メッセージ」と同じような演出なんだけど、幻想的なこちらの方が不可思議で魅惑的で印象深い。水のイメージがいい。月の影からムアッディブに繋がるところもいい。
そういやマックス・フォン・シドーが出てたの忘れてたんだが、リエト・カインズ役だったのね。この映画だけ見ると出てきてあっさりいなくなって誰やねんという感じだが原作を読んでいるとスーパー重要な人物なので嬉しい。
超個性的なキャラたちは、原作ですら「もう退場しちゃうの?もっと掘り下げてよ!もったいない!」というくらい深く書かれているので映画ではなおさら。「このキャラは本当はこういうキャラでこういうこと目論んでて考えててこうでこうで」と説明したくなるくらい薄味。仕方がない。
全編、「仕方がない」「もったいない」が溢れ出てくる映画だった。

2016.8.17【1回目】
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