つかれぐま

捜索者のつかれぐまのレビュー・感想・評価

捜索者(1956年製作の映画)
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かつての西部劇≒白人中心史観と指摘されて久しいが、逆に後年になって評価を上げた作品もある。
今ではジョン・フォードの最高傑作と言われる本作だ。

世界の巨匠たちが(フランスのヌーベルバーグやアメリカのリベラル寄り監督たち)こぞって絶賛しているだけあって「白人側の論理」で映画を進ませながらも、人種偏見の愚かさを見る側に刷り込む見事なバランスだ。

ジョン・ウェイン演じる主人公が、家族を殺した野蛮な先住民に復讐の執念を燃やす。とだけ書けば「白人側の論理」に他ならないのだが、この主人公が一般的な正義のヒーローではなく、狂人手前のレイシストとしてダークに描かれるのだ。それをこれまでずっとヒーローだったジョン・ウェインが演じるという意味。このキャラクターをヒントに『タクシードライバー』のトラヴィスが生まれた(byポール・シュレイダー)と言えばそのヤバさが伝わろう。長年西部劇を「白人の論理」で作り続けてきたジョン・フォードの自省が滲み出る。

主人公が冷たく接していた混血の孤児マーティンに、ジョーゼンゲン一家は温かく接する。マーティンと娘の恋仲を見て、思う所があったのだろうか。先住民の妻となり「もはや白人でない」と銃口を向けすらした姪に手を差し伸べる主人公。

戻った若者を歓迎するジョーゼンゲン家
老いた主人公がその家に入ることはできない。象徴的で哀しいラストショットの構図が素晴らしい。