ただのすず

歩いても 歩いてものただのすずのレビュー・感想・評価

歩いても 歩いても(2007年製作の映画)
4.2
赦す樹木さんを色々映画で観てきたけど、赦さない樹木さんも良い。
町医者として沢山の人の命を救ってきたその夫婦の息子が、
赤の他人を助けて命を落とす。
命日にその赤の他人を嫌がらせのように呼び続ける親。
あの独白が本当に悲しくて愛が深くて好き、バカみたいに泣いてしまった。
他人の為に犠牲を厭わない親の姿を見て育ったら、
素直な息子はそうなってしまうんじゃないかと。
親が子供に注いだ愛が、そのまま親に返還されるわけじゃない、
連れ子で赤の他人の少年が第二の夢に医者になりたいといった姿に、
愛はそうやって巡っているんだなと、
だから事件が起こっても起こらなくても家族は脈々と続いていく。
善意や悪意を綺麗ごとだけで描かない脚本が好き、
最後まで無駄がなく、あっという間に物語が終わった。

是枝監督の映画ではこの作品のことがよく話題にあがってくるので、
ずっと観る機会をうかがっていたけど、
映画は出会うタイミングが本当に大切だなと思う。
10代の頃の私にはきっと理解できなかった、
今、この時に観れて本当に良かった。
また歳をとったら観たい。