皿鉢小鉢てんりしんり

パリの灯は遠くの皿鉢小鉢てんりしんりのレビュー・感想・評価

パリの灯は遠く(1976年製作の映画)
3.8
なんだかはっきり分からないけど、自分の預かり知らぬところでとても悪いことが起きている気がする、という“不条理”の基本みたいな感覚がこれでもかというぐらいきっちり伝わる。感覚が伝わるっていうのは、すごい映画なんだろうと思いますね……

アランドロンが色んなところで人探しをしていくけど、探している女の写真を見せたら、どんどん回されてっていきなりビリビリに破り捨てられるシーンが、かなりどうかしている。

ジャンヌモローのいる怪しい邸宅に行くまでの、真っ青な夜空を走る機関車→霧深い林を走っていく車と移動をかなり丁寧に撮ってから、いざ館に入ったら、まさかの主観POV映像で邸宅の中を歩いていく。招かれている、導かれている、というその感じがよく出ている。

途中、全く主人公視点から離れて、ユダヤ人狩りが動き出していくのが描かれるけど、黒服の男たち、黒塗りの車が出動していく禍々しさ、特に車がなんだかよく分からない仕切りのいっぱいある建物の中を走っていくのが気味が悪い。(仕切りにABCが割り振られてて、ラストの自転車競技場改造のユダヤ人集積所もABCだったし、そういうことなんでしょうねぇ……)

バスに乗っけられてって、一旦自転車競技場に集められ、さらにそこからトンネルの奥に入っていくと真っ暗な空間に”列車“が……悪夢そのものなラストシーンだ……