マクガフィン

時計じかけのオレンジのマクガフィンのレビュー・感想・評価

時計じかけのオレンジ(1971年製作の映画)
4.5
政治や国家の支配欲的な全体主義や管理社会の現代社会を痛烈に風刺し、人間の欲望にまみれた自由放任で衝動的な暴力欲と性欲を描くだけでなく、嗜虐欲や逸脱行動欲まで描写するので、タチが悪いというか、感性がとび抜けているというか。更に、音楽で文化的な嗜好を加味しながら、芸術に昇華することが上手い。

自由と因果との関係が様々な要素で複雑に絡み合いから成立するのに、個の自由や意志を封じ込めて、それに対する如何なる責任も問うことはできなくなってしまう不自由さを描くことで、〈全体主義社会〉と〈個の自由〉のジレンマが浮かび上がることに。更に、音楽(文化的な嗜好)を取り上げる描写が巧い。前衛的で、パラドックス的で、反動的な善悪の問いかけが社会への警報になり、唯一無二な世界観で言葉では言い尽くせない衝撃が秀逸に。傑作。